今日のグリー用語 - 1957 -

♣ 1957年7月6日発行グリー時報第9号所載 ♣

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 現行の中学校や高等学校の教科書の中には明治以前の人々が学ばなかった新語が少なからず採用されている。新聞や雑誌にも目新しい言葉が日々に現れ、よほど博識の人でなければ全紙面の記事を正しく理解することは困難である。時勢はめまぐるしく変転し、人々の思想も動き、生活も推移する。勢いこれを表現する言葉もまた変化せざるを得ない。古い辞典を以て現代人の著述を正確に読もうとしても殆んど不可能に近いであろう。
 このことはわがグリークラブに於ても同じである。今年も一年生を多く迎えたわけであるが、それら新入生がまず困惑するのは楽譜を読むことよりも先に、部員同士の日常会話を理解することであろう。「今日はサルマスやな。ルヒシメ食うカネもあらへん。デレーするにも引き合わんし、お前ちょっとツェーヒャク貸してくれへんか?」「ムッカー、実にオコサだね。注射して来いよ」てな具合だから実に理解に苦しむ。世間には量的にも質的にも勝れた辞典が多く出ているが、仮にそれらの頁をくってみたところで解決のつくわけはない。われわれも時代の推移に伴って、最も適切な表現の出来る用語を生みだしてきた。そしてこれらの語はグリーに於て生活するに不可欠のものとなってしまった。
 当総合調査室では過去三年間に亘って研究を続け、全く新しい時代感覚と資料とによって編集を試みたがそれがようやく完成に近づいたので特に本誌上に公開することになった。
 以前からこの実現を待っていたのだが、理想は語るに易くして容易に実現されない。しかもこの成果を見るに至ったのは全グリークラブ員の協力にまつ所が甚だ多い。ここに集めたものはその数百五十にのぼるが、これらはいずれもグリークラブ内だけで発生・使用されているもので、中には外部に於ても同様に使用されている語もあるが、それらもグリーでは特異な意味で或は、ひんぱんに使われているものである。近く大方の示唆によって更に改訂・補正を加え、いよいよ完璧なものとして一冊の本にまとめて出版したいと思うのだが、ちと大げさすぎたかな。とにかく本邦初公開ではある。
     昭和三十二年五月
          責任監修 西島章三


ア行

 
アー(A)・・・
幹音「イ」のドイツ語であるが数字の6を表すに用いる。即ち「アー百」といえばこれ「六百」のことである。主に金額を表現するに使う。
アウアウ!!・・・
他人を冷かしたり、意外の時に発する音。
アス(AS)・・・
「イ」より半音下った音であるから数字の5.5を表す。「アス百」即ち五百五十。
頭にくる・・・
気に入らぬ事象により頭が変になって「ムッカー」とすることである。
意識しとる・・・
女性が異性の存在を意識して、特にすまそうとし、あるいは異性の注意をひこうと努力している状態。
一発ぶつ・・・
ひとつ歌おう。
イビキマン・・・
合宿や旅行中イビキで名声の高い人。例:K、Mなどはその筆頭。
イロハのイの字・・・
はどう書くの?発生地は博多。
浮気・・・
文字通り。何人もガールフレンドを変えること。
エー(E)・・・
数字の3を表す。「エーマン」は三万のこと。
エス(ES)・・・
数字の2.5を表す。
SP・・・
テンポの速い奴。
エフ(F)・・・
数字の4を表す。
LP・・・
スローモーションの奴。
オーダー順・・・
「ステージオーダー順に並んで下さい」
オクターブ・・・
数字の8を表す。
オコサ・・・
W君の本名とか。美しいものを見たときの感嘆詞という。「今日の演奏はオコサで頑張ろうや」
オジヒ・・・
自弁のこと。正しくは「お自費」と書くのだが「お慈悲」に共通する。「今日の電車賃はオジヒです」−−そんな慈悲なことあるかいな。
お花ちゃん・・・
詳しくはN君又は雲仙加勢屋館へ照会のこと。涙あふるるラブストーリー。

カ行

 
解禁・・・
旅行中三禁法が一日間だけ解かれる日がある。「禁酒」の解禁には皆大喜び。
獲得・・・
汽車の座席、枕などは早い目に獲得すべし。特にドテラの獲得は有名。
かしら節・・・
小西節ではない。「そうですかしら。今日のおかずは何ですかしら。もう寝ようかしら」女性が使っては面白くない。これをヒゲ面のグリーメンがやるのだから格別。本年春の旅行中に特に流行。震源地はバリトンパートリーダーT氏。
片桐先生付・・・
旅行中大切な役務。いわば秘書の役目だが、荷物もち、座席の獲得などが主な任務。
活水・・・
長崎市のミッションスクール。特にグリーと関係が深い。もちろん女学校。
家内・・・
「これが家内の写真だ」勿論彼女のことなのだが。
カメる・・・
カメラから来た語で写真を撮ること。「カメるさかいみんな集まれよ!!」「よっしゃカメられたろ。早うカメってくれ」
カレソる・・・
カレッジソングを歌うこと。
カレソン・・・
カレッジソングの略称。
祈祷師・・・
「日々の糧」をハモって食前の感謝や礼拝の祈祷などを行う人。旅行中の役目の一つである。
キャンセル(Cancel)・・・
予定のステージが取止めになること。
凶作・・・
「今年の新入生は凶作だね」出来の悪いことであるが、グリーの新入部員に対しての悪口ではない。「出来」とは女性の容貌を指していうのである。
教養科目・・・
いつ、どこででも簡単に歌えるようなレパートリー。即ち「夕やけ」「とうりゃんせ」「どんぐり」など。
クール・・・
グリーのたまり場所。河原町蛸薬師にある。
グッとくる・・・
胸がつかえます。
グルガリン・・・
旅行必携のうがい薬。
グロ・・・
大声では言えないが、実は大便のこと。
グロッセン・・・
グロをする場所。つまりトイレ。
ゲー(G)・・・
数字の5を表す。
こじらさないで・・・
鳥取の一ファンからY君宛の忠告の言葉。喉を痛めるなの意。以後グリー内部でも流行。
ゴツキ・・・
五木の子守歌のこと。
この際・・・
「この際思い切ってやりましょう」などよく使われる語。前マネージャーH氏が発明者。
今夕は・・・
「今夕はかくも盛大に・・」昨年春期旅行で当時のS幹事長の名言。だが毎夜の如く「今夕は・・」とやるものだから一躍流行してしまった。
これ・・・
とにかく万物あらゆるものの代名詞に使用。
蛍光灯・・・
感がにぶいね。

サ行

 
最低リンコン・・・
「最低」を更に強めていう語。
サド原・・・
現ドクターK氏の異名。その注射に対する異常な熱意により命名。
サルマス・・・
現在最流行の語。本当の意味は誰も知らない。ただ何でもいいから「ああ、サルマスだ。」とやる。少々困った場合に発せられるものであることは確かである。博多の岩田屋の薬品部にこれを売っているとのこと。N君がからかい半分で店員に「サルマス売ってますか」と問うた時、店員は「サロンパス」と聞き違えたのか「薬品部にあります」と答えたそうだ。語源は「猿マス」である。
三禁法・・・
旅行中、絶対禁止の事項。即ち禁酒、禁雀、禁賭の三つである。もう一つ抜けているのだけどね・・。
しびれる・・・
すばらしい演奏に聴衆がうっとりする状態。
集合!!・・・
人間に対しての呼びかけではない。「万年筆集合!!」「ピッチ集合!!」という具合に使う。
ジャリ・・・
小中学生のこと。ジャリは小さい。演劇用語である。
ジャリステ・・・
小中学生のための演奏会。ステはステージの略。
少女趣味・・・
こんな人がグリーにも何人か居るというがお心当りの方は?
蒸発・・・
エスケープ
庶務用・・・
ポスター、チケットなど庶務用に残す必要がある。本年春の旅行中には庶務用と称して何でも持って帰る風習が流行した。
シロ・・・
グロに対して小便を称す。シュロと称する者もあり。
シロッセン・・・
シロ場のこと。
スシペの気持・・・
三声ミサ、グローリアにおける、あの気分である。
ステちゃん・・・
ステテコである。
ステテコスタイル・・・
夏期旅行などで車中で行われる男性独特のスタイル。あまり真似はしない方が良いが暑くて我慢できぬ時には自然にこうなってしまう。一説にはステテコスタイルは女性の都スカートスタイルと同格なり、と云う。
ストーム・・・
演奏会後屋外で一発ぶつこと。
スポンジ・・・
各パート中で他の声を吸い込んで了う様な実力の持主をいう。
スミトモさん・・・
NJBレナウン係の名プロデューサー。現庶務・H氏の異名でもある。
節煙・・・
旅行中は必ず守ること。特にテノールは禁煙が好ましい。
センエツ・・・
「センエツながら先輩を紹介します・・」H元渉外マネの名句。
洗濯係・・・
夏期旅行に於ける役目の一つ。洗濯をするのではなく、クリーニングに出す品の集配係である。
ソプラノ・・・
Y君の声に鳥取の一ファンは「すばらしいソプラノ」と称賛した。以後彼はテノールではなくソプラノとなった。
ソルファ・・・
新曲などまず階名でうたうこと。Solfageの略。なまってソロハともいう。

タ行

 
第一種正装・・・
黒の学生服、黒ズボン、バッジは必ず左、くつは黒もしくは茶、はでな色のくつ下は不可。万年筆はポケットにささぬこと。冬期の服装。
第二種正装・・・
白カッターに紺の蝶ネクタイ。バッジは左胸。バンドはビニール製のグリーバンド。夏期の服装。
大衆席・・・
旅行中のバスの最後列の長い座席。ここに坐る連中はいつも決っていて品が悪いことで有名。「大衆席、ガラが悪いぞ!!」
タクる・・・
タクシーを拾う。
脱帽・・・
敬意を表す意味か何だか知らないが異性が通ると必ず誰かが「脱帽!!」と号令をかける。昨年春の旅行中岩国にて発生す。
ダベる・・・
つまらぬことをペチャペチャしゃべること。
チーちゃん・・・
福岡太宰府に居た猿の名。「チーちゃんのごあいさつ」を真似る連中が居る。
チス(CIS)・・・
数字の1.5を表す。
注射・・・
疲れた時にビタミン注射をするのは旅行中であるが、最近は頭のおかしくなった者に対しても「お前、注射して来いよ」という具合に使うようになった。K君はグリーメンに注射を打ってまわることに一種の快感を覚えるという。
長楽寺・・・
グリーをお得意先とするコンパ場。円山公園奥にあり。
チョンガー・・・
独り身の淋しさよ。
チロちゃん・・・
長崎活水女高一年生のファン。
ツェー(C)・・・
数字の1を表す。
つもる・・・
Y君がその名人。彼は各地方で、つもっている。マージャン語からの転用。
デー(D)・・・
数字の2を表す。
手紙・・・
演奏旅行中最もなぐさめとなるもの。日に二、三通も来るものもあれば、旅行中一通も来ないと嘆くものもある。とかく話題のたねはここから生まれる。オバアちゃんにセッセと書くものもいる。
テクる・・・
徒歩
デッパツ・・・
「さあ、デッパツだ」出発のことである。
デレーッ・・・
「お前あんまりデレーッとしたらあかんぞ」鼻下を伸長させること。
デレデレ・・・
同右の強調語。
ドイツリード・・・
これの名人が卒業生の中に居ます。
ドキリンコン・・・
ドキッとした時の表現。
ドクトル・・・
旅行中の医療係。
トサカへ来る・・・
「頭へ来る」と同じだが、頭よりもトサカにした方が適切であるらしい。
トリオラフターズ・・・
ステージ上で演奏中でもよく笑う連中三人のこと。代々ベースの部員によく見かけるが最近は第二テノールにも数人居る。
トローン・・・
「花火」の中に出てくる表現。

ナ行

 
ナウ、リッスン・・・
Y渉外マネの慣用句。特に旅行中、伝達の際に使う。「諸君、聞いて下さい。」
ネオちゃん・・・
長崎活水女高一年生のファン。
脳がいけない・・・
読んで字の如し。この時が注射を必要とするのである。“お”を冠する事もある。
ノーバイン・・・
バインダー所持不要。
ノス・・・
ノスカイヤの略。
ノスカイヤ・・・
柳河に出てくるポルトガル語で遊女屋を指している。
ノイローセ・・・
ノイローゼの極度なる症状。

ハ行

 
パスる・・・
ハモると同様な意味だがもう少し声をはり上げて歌うことである。
パツイチ・・・
「発一」と書く。意味は「一発ハモろう」などの一発と同じ。セカンドN兄の別名でもある。
ハマグリ・・・
ジャリとりも少し大きい。
ハモる・・・
何人か寄ってハーモニーをつけて歌う。
ひきあう・・・
物事が好都合に運ぶこと。他人におごってもらった時などが一番ひきあうのである。「電車賃はオジヒで」などと言われたときはまさにひきあわん。
ヒット・・・
間髪を入れずにセンスのある語を発してみんなの注意をひかせた場合の状態。
ビタミン・・・
旅行中の愛用薬。
ピッ・・・
ピッとひきしまってゆこう。
ピッチ・・・
指でピーンとはじいて音をとる。音叉のことである。C或はAが普通。
ピヤピヤ・・・
「デレー」などと同じような意。語源は鳥取砂丘に沈みゆく太陽を表現した感嘆詞。
ピヤピヤ・・・
右にほぼ同じだが、ニュアンスは少し違う。
フィス(FIS)・・・
数字の4.5を表す。
フェアウェル・・・
送別。
不潔ね・・・
キタないぞ。
ベー(B)・・・
数字の6.5を表す。
ペナント係・・・
旅行中の役務の一つ。演奏終了後直ちにペナントをはずしてからバスに乗るのだが、その頃にはみんな坐ってしまっていて、いつも座席がない。
ホーリーマウンテン・・・
高い大きな聖なる山。ここには谷間もあります。
豊作・・・
凶作の反対。もちろん異性を評価する際に使用する語である。
宝楽・・・
グリーメン愛用の大衆中華食堂。京極にあり、学生は一割引なのが魅力。ブタマンが有名。
ホームラン・・・
ヒットの最高級。
謀略・・・
はかりごとなり。「ファーストどうした」「セカンドの謀略にひっかかって歌えんでイケンがな」Y氏が元祖。

マ行

 
マタマタ・・・
ベースK君の製造語。オツる話をしていると「マタマタ」である。つまり“又・又”なり。
前が後で後が前・・・
はっきりした事はバリトンM氏へ。大宰府にて発生。
マル・・・
お金です。
見合い・・・
新入部生と旧部員との顔合せ。本来の意味の見合いも現在流行しており、K兄やO兄など郷里の両親のもとから呼出しの電話がヒンパンに来て皆に冷やかされている。
ミリキ・・・
魅力。
ムッカー・・・
しゃくにさわったときの発生音。三月六日午後八時五十分、大阪毎日会館で録音の帰りのエレベーター内で発生。以後あらゆる事に対して使用される。ムカムカの延長語。H氏がそのエキスパート。
メカニック・・・
略して「メカ」ともいう。英語の本来の意味とはおよそ異り、賞賛のときに発する音で「このホールはメカね」「みんなメカニックに歌おうぜ」という具合。
持込一切付加・・・
ノーバインのこと。または脱帽、脱靴などのとき。
モメるモメる・・・
ひがみの場合に発する。特に対異性関係に於て。
文部省・・・
見かけは堅苦しいが、内容は全然おそまつ。前幹事長S氏の別名。

ヤ行

 
ヤッコラヤッコラ・・・
かけ声?である。
遺言・・・
四年生が卒業時に後輩部員に対して残す言葉。
ヨセヨセ・・・
「やめとけ」を上品に言う。K氏専用。
ヨネ・・・
米である。米飯の事をも言う。
四四一・・・
新讃美歌で405番。ストームを終えて最後に「神共にいまして・・」と歌う。
よろしゅうございますか・・・
K氏の愛用語。練習がだれてくるとこれを連発する。

ラ行

 
ルヒシメ・・・
「ひるめし」といってもピンと来ない。
ルモ・・・
二人も三人も作るとモメるモメる。
ルラッパ・・・
「新しき歌・・」に出てくる歌詞で本来はラッパなのだが、フォルティシモで強調するものだからつい舌がすべってこうなる。
レターセット一式・・・
旅行必携品。
レナウンスタイル・・・
庶務氏の盛装。サ行をもう一度参照のこと。

ワ行

 
ワンツースリー・・・
同志社チアーのかけ声なのだが、これを弱々しい発声でやることが流行。延岡以来である。

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